比治山病院設計にあたって

 比治山病院玄関横の壁デザインについては、当院の基本理念「良質な医療サービスを提供し、家庭的で、地域に開かれた病院を目指します。」に基づきまして、『バランスと調和』をモチーフにデザインしました 。

    

  『バランス』とは、釣り合い、均衡を意味し、エネルギーが強く引き合う「動的な釣り合い」を意味します。医療、薬剤の日々の進歩と、今までの診療行為の歴史をふまえて、それらを『バランス』させた適正な診療方法で、より高次な医療サービスを患者様に提供していくところにあります。

 『調和』とは、全体がほどよく釣り合い、矛盾や衝突がなくまとまっている「静的な釣り合い」を意味します。社会の不安定な状況の中で、地域と当院、他診療機関と当院、患者様と医師、医師とスタッフ等々、人と人のつながりを大切にしていくことにあります。 様々な面でまとまりと穏やかな、健やかな『バランスと調和』を保ち、都市型地域医療に貢献していくという当院の理念を表現しました。

 素材は花崗岩です。幅9cm、15cmの2種類を本磨きとバーナーで仕上げました。本磨き仕上げは、そのヌメヌメ感で、硬い石を柔和に見せます。バーナー仕上げは、自然の厳しさからくる石の活き活きした表情を出してきます。同じ石でもそのテクスチャにより違う顔を見せてくれます。その石を打ち放しコンクリート壁より浮かせて、簾(すだれ)状に構成しました。

 石の浮揚感と柔和さが、病院の「透明感と暖かみ」につながります。そして簾(すだれ)の平行状の石は、自然との『調和』、穏やかさを表現しています。柔和な表情のダークカラーの石をベースに、バーナー仕上げの石で抽象的なイメージを創りあげています。それぞれが優しい気持ちでお互いに手をつなぎあっているような『バランス』があり、人と人の『調和』を醸し出している情景を描きました。また、中央部は、海からあがる「朝陽(あさひ)」とも、人の「和(わ)」ともイメージしています。

 見る人によって、「蓮の花」に見えるかもしれません、「カニさん」に見えるかもしれません。いろいろなイメージを膨らませて頂きたいと思います。皆様に親しみをもって愛される病院を目指して、この壁に一役買ってもらいたいと願っています。

                                                  角田稠史