比治山病院設計にあたって

 ヨーロッパの都市の中心に広場と教会があり、日本の村の中心には鎮守の森と社寺があった。ストレスの多い現代社会においては心の病院である比治山病院が地域社会から愛され親しまれ信頼される存在であって欲しいと願って建築設計いたしました。

 具体的には最上階に院内の患者と職員、時には地域住民も向かい入れられる交流の場としての三角部屋の小さなホール(作業療法室)と太陽の光に満ちた屋上広場を設け、地上階1階南面には、光と風と水による時間の流れを感じる噴水庭園を設け地域社会との交流の場としています。
 2階~4階の病棟階は、中央に光と風をとり入れる外部吹抜と食堂デイルーム及びナースを中心とした職員の空間を、周囲には各人原則一つの窓、社会への窓をもつ病室並んでいます。こうした一つのまとまりを持った「心の病院・比治山病院」という建築が一つの家、地域社会にとっては昔の社寺のような存在になってほしいと思ったたたづまいを考えました。噴水庭園のデザインについて 生命の源「水」はその存在のみで人々の心を癒やす。

 光や風によってあるいは時刻・季節・自然の変化によって豊にその表情を変化する。更に時刻を知らす演出する水はその音とともに命の時間を感じさせる。背景となる壁画のテーマは「日本・広島・比治山・そのみどりと水」を現し、その中央の出入り口扉の位置が比治山病院の位置を示しています。

    

                                                     建築家・山崎泰孝